心理学がイメージと違った?溝上慎一先生インタビュー
そんなの当たり前です!
心理学は社会に出てからも役に立つ!浦上昌則先生インタビュー
使うか使わないかは、君ら次第だけど…。
できるだけ広く学んだ方がいい。市川伸一先生インタビュー
そういうチャンスは開けています!
「大学生研究」「大学教育研究」などを研究する心理学者・溝上慎一先生に、心理学科での学び方についてアドバイスをいただきました。
青年心理学です。でも、もともとは…
例えば、「自分は明るいと思っている」とか…
はい。青年心理学者としてスタートした訳ではないんですけど、…
ええ。このセンター(高等教育研究開発推進センター)に来なかったら、…
はい。でも職を得たわけですから、…
「つながった」というより「つなげた」んだと思います。…
いや、本当はね、経済にすごく関心があったんです。…
もともとは「教師」とか「学校教育」に興味があったんですが、…
ええ。あと数学です。私、高校で理系だったんですよ。…
ほとんどの人は言いますよね。「心理学って、思っていたものと違ってて、堅苦しくて面白くない」って。そりゃ、私にもありましたよ。心理学の概論って、例えば「学習理論」だったらネズミの実験とかから入っていくんで、「なんだ、これは!」と思いました。
けどね、それが面白いとか面白くないとかではなくて、…
はい、絶対大変です(笑)。心理学は、方法論がすごくしっかりしてるんですよね。だから実験の仕方とか、調査の仕方、それから統計とか、そういう授業がちゃんとあるんです。そのたびにレポートがあって…。私が学生の時は「1週でも休んだら留年」っておどされました。
例えば、心理学の統計解析って、…
基本的には、大学受験で数学が絡んでなかったら、心理統計はしんどいと思います。逆に言えば、高校までの数学で十分だと思うんで、高校では絶対やってきて欲しい。最低でもセンター試験くらいは…。
いや、これはあくまで理想論なんで、…
特に「証明」ですよね。…
「統計なんかで人の心はわからない」と言って心理学に幻滅する学生が多くいますが、…
ええ。私が高校までで一番嫌いだった「枠組み」ですね。…
ええ。逆にね、高校生がギャップを感じないくらいに心理学や学問の世界を知っていたら、…
でもね! 夢みたいなイメージでもいいんで、…
別に何でもいいと私は思いますが、「なんかいろいろ勉強したい」とか「なんか面白いのが見つかる」っていうのだけは、絶対に避けた方がいい。
一般論ですけど、高校で見つからない者は、大学に入っても自分のやりたいことは見つかりません! 先生とかからずっと言われながら決まらなかった者が、大学に入ってさらに選択肢が豊かに増えて、決まるわけないじゃないですか。
そういうデータもあります。…
月並みですけど、最初のきっかけは「面白そう」でもいいと思うんです。でも、どんなことでも、それを専門としてやっていく中で、大変なこととか、ギャップとかが、多く出てきます。当たり前ですね。
スポーツでもそうじゃないですか。別に『キャプテン翼』とか『スラムダンク』とかから入ってもいいわけですけど、実際にやっていくうちに自分の能力とか、適性とか、あるいはすごいヤツとか、うっとうしい先輩とか、しんどい要因がいろいろ出てきますよね。
ええ。でもそんな中で、自分が「少しでも上手くなりたい」と思って、人はそこを乗り越えていくのです。
専門を勉強していく過程では、どうしても「面白い」「面白くない」だけでは進めない瞬間がたくさん出てきます。これは心理学に限らず、どんな分野でも言えることで…。だから、重要なのは忍耐強く続けていくことです。最初は「面白そう!」でもいいけど、とにかく続けていくこと。そうすると、はじめには見えなかった面白さが見えてきます。皆さん、頑張ってください。
溝上慎一(みぞかみ・しんいち)
京都大学 高等教育研究開発推進センター 准教授。
1970年、福岡県生まれ。自己論、青年心理学、大学生研究などを専門とする。大学時代は月の本代が5万円、毎日の勉強時間は10時間以上というハードな学業生活を送り、早くから研究の道を志した。博士(教育学)。
「進路選択」「キャリア研究」などを研究する心理学者・浦上昌則先生に、心理学科の卒業後の進路についてアドバイスをいただきました。
大学で登録されているのは、発達心理学です。…
キャリア研究は、すごく複合的というか、学際的な領域です。…
まあ、現在の産業界主導的なキャリア教育を批判しようとしているんですけど(笑)。
今のキャリア教育は、子どもたちに「ガンバレガンバレ」って…
そう。特に人生においては、予測してないことがバンバン起きて、やりたくてもやれない羽目に陥ったりするんで。そうすると、「あきらめる」ってことも必要になる。どうやったら上手くあきらめられるか、とか…。そして、それがメンタルヘルスのためにも…。
と、いうようなところが、興味・関心の中心にありますね。ああ、あんまり言い方が良くないかな(笑)。
彼らはたぶん今、「ガンバレ、ガンバレ」の真ん中にいますから…
一般的に、学部レベルでは、この章の分け方で言えば「ジェネラルに活かす」が一番多いでしょう。業種についても、経済とか経営とかと特に変わらないくらいまんべんなく…、って感じでしょうね。まあ、教育・福祉関係は少し多いとは思いますけど。
うち(南山大)の学生もほぼ「ジェネラル」です。あと、教員志望もいます。中・高の免許が取れるんで。
「進学したい」って人には、まず現状を伝えて、それでも意志が揺るがないならどうぞ、って感じです。…
ええ。あと、最近はオーバードクターの問題がすごく深刻になっています。…
まず、研究職は「ポストにアキがないとなれない」というのが…
確かに「楽ではない」ですよね。「大学院に進学したら必ずなれる」っていうわけでは、全くないんで。
キャリアをやってる立場から言えば、「ダメだったときのことも考えとけよ」ってことですかね。「とりあえず進学する」っていうのは、かなりリスキーです。
私の実家は農家なんですよ。だから、「ダメだったら、実家に帰って田んぼやればいいや」っていう逃げ道がありました(笑)。これはラッキーだったと思います。
ないですね(笑)。…
心理学をやって身につくもののうち、仕事で一番応用の利くものは「統計」だろうと思うんですよ。…
うーん。心理学に限らず、大学で第一に身につけるべきなのは、「学ぶ」ということ自体なんです。だから、興味のある学問領域を選んでいいと思うんですよね。
学部レベルの知識がそのまま活かせるほど、実社会は甘くありません。でも、「学ぶ」ってことを徹底的に自分のものにしておけば、これは絶対に役に立ちます。というか、これを覚えなきゃいけないんです。
「心理学的なものの見方」ですかね。…
ええ。「こころ」っていう構成概念で…
ええ。そこら辺が対比的と言えば対比的ですね。…
まず、「心理にしようか、哲学か、外国語か…、まだ迷っている」って人には、「全部ちゃんと比較しろ」って言ってるんですよ。直感とかではなく、できるだけ証拠を集めて、比較してから決めなさい、って。反対に、「心理学しか考えてません」っていう人には、「それはやめとけ」と言ってます(笑)。他にどういうものがあるのかをちゃんと調べて、「やっぱり心理学がいい」って場合は心理においで、って。いずれにせよ、何も知らないまま決めるというのは危険ですからね。
ええ。心理学って、とっても学際的なんですよね。…
一番簡単で読みやすいのは、各大学が発行している大学案内ですかね。…
まず、「高校の勉強をすべてやっておいてくれ」って言っておきたいですね。…
僕自身は、大学って楽しいところだと思いたいんです。「心理学は」っていうより、「大学で勉強する」ってことは楽しいものだと思うんで。まあ、「勉強するのが嫌い」っていう人は来ないと思うんだけど、自分で調べたり、何か書いたり、わからないことを研究したりしたいって人は、特に歓迎したいですね。
でも、ここまで言うと、来る人が少なくなっちゃうかも…。ハードルが高過ぎますかね(笑)。
浦上昌則(うらかみ・まさのり)
南山大学 人文学部 准教授。
1967年、岡山県生まれ。高校時代は医師にも憧れたが、たまたま模試でユングの文章に出会い、心理学へと進むことに。学生への指導では自主性を尊重する一方、厳しい突っ込みにも定評がある。博士(教育心理学)。
あらゆる分野にまたがる心理学諸学会連合の理事長でもある心理学者・市川伸一先生に、心理学の分野選びについてアドバイスをいただきました。
認知心理学と教育心理学と、両方挙げることが多いですね。…
実験室でやっているような基礎研究をそのまま応用することはできません。でも、「学習」とか「理解」とか、そういう具体的な問題に対してなら、認知心理学でわかっていることが役に立つかもしれないし、逆に認知心理学では扱ってこなかったテーマも発掘できる。そう思って、「学習相談」というのをはじめたんですね。
「やる気が出ない」という相談もありますので、学習意欲など「動機づけ」も研究するようになりました。
いえ、私はもともと理系で、天文学者になりたかったんです。大学に入ったときも(東大の)理科Ⅰ類です。ところが、東大では「進学振り分け」っていう制度がありますよね。私は大学に入ってから遊びすぎたということもあって、天文学は「ちょっと無理だな」と…。
それで考え直して、いろいろ見ている中で、心理学っていうのが「理系でも取っつきやすい」と思いましたね。
ええ。私もそれまでは「心理学」って言うと、やっぱり精神分析とか、そういうイメージを持っていたんですよね。でも、実際に授業を受けたり本を読んだりしていると、実験や調査をして、データを集めて分析するという、理系と文系のちょうど中間のような「中途半端さ」があって、自分に合っているような気がしたんです。
いや、これがまた点数が足りなくて(笑)、文学部の心理を選びました。…
この本の「心理学の全体マップ」にもあるように、大きいのは5分野です。社会心理学、認知心理学、発達心理学、教育心理学、臨床心理学。人数で言うと、いま一番大きいのは臨床心理学ですね。マップには生理心理学もありますが、これらの分野ほどは大きくありません。
学会数で言うと、全部で40個くらいあります。…
もともと日本心理学会という老舗の学会が…
ええ。学問がだんだん細分化されて、…
東大の「進振り(進学振り分け)」のように、…
高校生にできることって言うと、…
やっぱりできるだけ広く学べるところですね。でも、とりあえずどこかに入ったとしても、「この大学に入っちゃったから、もうこの分野しかできない」とは思わないことです。本とか放送大学とかもあるし、または他大学の授業にモグったり(笑)、いろんなセミナーに参加したりとか、そういうルートはいっぱいあります。
心理学の他の分野とか、それから心理学以外の学問にも、そういうチャンスはけっこう開けているということです。大学では、時間が自由に与えられてますから。
いいと思いますよ。例えば、…
ええ、自分の人生が豊かな方がいいと思います。…
それから、でいいでしょう。実際には、やっぱり修士課程から…
ええ。学部のうちは「広く浅く」いろんなものを学びます。心理学って、研究や調査の方法も幅広いですから。
それでも、データに基づいて実証的にものを言うというのは共通していますね。だから心理学を出た人は「データに強い」と言われるんですよ。これは研究者にならなくても、いろんな仕事で役に立つと思います。心理学では、ぜひそういうことを身につけていただきたい。
ある程度はメニューが決められています。…
まず、授業を受けてみて、その内容を面白いと思うか。…
ハハハ、受験勉強をバカにしてはいけません。受験勉強を通じて、いろんなことを学べるんですよね。自分の「勉強のやり方」について考えるとか、自分の勉強スタイルを確立するとか、そういうチャンスでもあるんです。
例えば、文章を読んで、ちゃんとその意味するところをつかむなんて、どの教科でもやるわけですよね。当然それは大学でも、社会に出てからも役立ちます。受験はそういうことの「基礎トレーニング」になりますよね。
気持ちとしては、どの教科もやってきてほしいですよ。…
「敬遠されがちなんだけど、やってくるといいよ」というのは数学です。…
自分でも思うのは、「人間についての幅広い見方ができる」っていうことですよね。…
「やっぱり教育学の方がいいかな」っていう選択もありえる話ですよね。哲学や教育学を見ていると、「人間とはこういうもの」「こうあるべき」とか、わりとその「べき」論が強い。心理学では、いろんなデータを出し合いながら、科学的・分析的に論争していくわけです。
心理学は理論、それから実証。この両方を大事にしながら人間を研究していこうっていう学問なんで、それがしっくりくる人は、どうぞ心理学に来てください。
市川伸一(いちかわ・しんいち)
東京大学 教育学部 教授。
1953年、東京都生まれ。心理学の立場から中高生に勉強法へのアドバイスを送るなど、教育実践とも積極的に関わりながら研究している。心理学関係の学会が集まる日本心理学諸学会連合の理事長でもある。文学博士。